目次
一度はあるはずだ。
なんとなく微妙だった日。
失敗したわけじゃない。
会話も普通にできたし、流れも悪くなかった。
でも終わったあと、どこか引っかかる。
「…まあ、こんなもんか」と、
そのまま流したこと。
その“違和感を流す癖”が始まり
ここで一度止まって考えてみるといい。
その「まあいいか」は、本当に“問題なかった”のか。
それとも、
違和感をなかったことにしただけなのか。
人は、異常よりも“通常”を選びたがる。
多少ズレていても、「こんなもんだろう」と処理する。
これはよくある心理で、いわゆる正常性バイアスと呼ばれるものだ。
本来なら気づくべき小さなズレを、
「問題なし」として処理してしまう。
つまりあの瞬間、
ズレは発生していたのに、認識されなかった。
経験は“型”を作り、思考を止める
経験を積むと、人はうまくなる。
ただし同時に、別のことも起きる。
“自分のやり方”が完成する。
流れ、距離感、タイミング。
それなりに通用する“型”ができる。
これは便利だ。
考えなくても、ある程度は成立する。
でもここで、ひとつ問題が起きる。
人は、考えなくても回るようになると、考えなくなる。
これは能力の問題ではない。
仕組みの問題だ。
脳はもともと省エネを優先する。
一度うまくいった流れは、自動化される。
いわゆる“思考停止”の状態に近い。
ここから先は、
「判断しているつもりで、実は過去をなぞっている」状態になる。
なぜズレても“うまくいった気”になるのか
ここが一番厄介なポイント。
普通なら、ズレれば失敗として認識されるはずだ。
でも実際は違う。
ズレているのに、「悪くなかった」と思うことがある。
なぜか。
人は、都合のいい部分だけを拾うからだ。
・笑ってくれた
・会話は続いた
・拒否されていない
こういう“問題なさそうな材料”だけを集めて、
「今回も大丈夫だった」と結論づける。
これが確証バイアス。
自分の中で「うまくいっている」という前提があると、
それを裏付ける情報だけを拾い、ズレを無視する。
さらに、
一部がうまくいっただけで全体を成功だと思う。
これがハロー効果。
つまりこうなる。
ズレていても、成功体験として積み上がる。
過去の成功が“基準”になる
もうひとつ起きていることがある。
最初にうまくいったやり方。
それがそのまま、“正解”として固定される。
「あの時はこれでいけた」
「この流れなら大丈夫」
この“最初の成功”が、判断の基準になる。
これがアンカリング効果。
本来なら相手ごとに変えるべきなのに、
過去の基準に引っ張られる。
結果どうなるか。
目の前の相手ではなく、“過去の正解”に合わせて動く。
当然、ズレる。
ズレても修正されない理由
ここまでで、
・ズレは起きている
・でも気づかない
は説明できた。
問題はその次。
なぜ、そのズレが修正されないのか。
理由はシンプル。
フィードバックが入らないから。
風俗という環境は特殊だ。
基本的に、明確なダメ出しはされない。
多少ズレていても、成立はする。
つまり、
間違っていても、そのまま通る。
この状態が続くとどうなるか。
ズレが修正されず、そのまま固定される。
経験しているのに、上手くならない構造
ここまでをまとめるとこうなる。
慣れる
↓
型ができる
↓
思考が減る
↓
ズレる
↓
でも気づかない(正常性バイアス)
↓
うまくいったと解釈する(確証バイアス・ハロー効果)
↓
過去の成功を基準にする(アンカリング)
↓
修正されない(フィードバック不足)
このループ。
これが、
“経験しているのに、上手くならない構造”である。
なぜ初心者のほうが良く見えるのか
ここで最初の違和感に戻る。
なぜ、初心者のほうが良く見える瞬間があるのか。
答えは単純だ。
まだ“自動化されていない”から。
・ちゃんと見る
・ちゃんと反応する
・ちゃんと考える
技術はない。
でも、
思考はしている。
一方で、慣れた側はこうなる。
“考えなくても回る”状態に入っている。
この差が、そのまま出る。
経験が男を下手にする、本当の理由
結論はシンプル。
経験は、人を上手くするが、同時に鈍くもする。
問題は経験そのものじゃない。
問題は、
経験によって“考えなくても成立する状態”が完成すること。
その瞬間から、人は少しずつ見なくなる。
最後にひとつだけ。
なんとなく微妙だった日。
「まあこんなもんか」で終わらせているなら、
それはもう、ただの一回じゃない。
経験が男を下手にするのは、経験が増えるからじゃない。
ズレに気づけない構造に、静かに入っていくからだ。

